3日目:お題『目が覚めるまでに』
今回、閲覧注意があります。自己責任で読んでください
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家の近くに、人に近づこうとしない、ガリガリの野良猫がいた。
その猫は、毎朝私の家の前に届けられる牛乳瓶を、私が目覚める前に奪っていく。
どうにかしようと思い、次の日の朝は牛乳が届けられる前に、庭の隅からじっと玄関を監視した。
カラスが我が家のゴミ箱を漁っていたが、猫を捕まえることが優先なので放っておいた。
牛乳配達が来たほんの数分後、例の野良猫が来た。
バッと牛乳瓶を器用に転がして草むらに消えていく猫を、大股で追いかけた。
何かを蹴ってしまった感覚の後、パリンッとガラスの割れる音がした。
周辺に、腐った牛乳の匂いが立ち込んだ。
ガリガリの野良猫はじっとこちらを見つめている。
野良猫の背後には、小さなボロ雑巾があるかのように見えたが、それは5匹の子猫の死体だった。
「野良猫。お前の子どもは、もう牛乳を飲むことは出来ない。これはお前が飲むべきだ」
大量に転がっていた牛乳瓶の中から、今日の日付が書かれたもののフタを開け、手のひらに注いだ後、野良猫の口元へ近づけた。
「にゃー」
死にかけた老婆のような声で鳴き、猫はそろりと腐った牛乳が広がった地面を舐めた。
その周りには、抜け落ちたカラスの羽や血痕が至るところに散らばっている。
きっとこの猫は、毎朝子猫が目を覚ますまでに食料を調達していたのだろう。
腹を空かせたカラスが子猫を襲ったのだろうか。
それともカラスは死体を漁ったのだろうか。
どちらにせよ、野良猫はまだ子猫が眠っているだけだと信じて、いつものように我が子の目が覚めるまでに食料を調達しているのだ。
「野良猫。この子たちの墓を建てたら、お前は自分の餌を調達しようと思うだろうか?」
「にゃー」
野良猫はまた、死にかけた老婆のような声で鳴き、地面に広がった腐った牛乳を舐め続けた。
8/4/2023, 8:25:36 AM