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《終わらせないで》
手が悴んでよく動かない。キッチンの蛍光灯がやけに眩しい。体がだるい、眠い。マグカップとグラスを洗ったら寝てしまおうと思い、水ですすぐ。今日は誰かを家に上げていた気がする。あの人は白湯を飲んでいたっけ。なんだか頭に霧がかかっているみたいに、ぼーっとする。布巾で拭いて食器棚に戻そうとした。が、マグカップを床に落としてしまった。ズシャッと嫌な音を立てて割れてしまったそれを拾おうと右手を伸ばした。なんだか、ぬるぬるして上手く掴めない。血だ。そう気づいたら痛みで力が入らなくなってしまった。どうやって片付けようかと考えながら、カップの破片を眺めていた。思い出してしまった。これは、私の罪、今までの罪がバレてしまう。いわば、証拠だ。これを片付けなければ、私は捕まってしまうだろう。誰に?警察か?とにかく、隠さなければと思ったらすぐだった。破片を一気に鷲塚みシンクに叩きつけた。蛇口をひねれば水が流してくれる。これで大丈夫。用が済んだし今日は寝よう。ふらふらとした足取りで寝室に向かうと、ベットの横にあの人が倒れていた。なんということだ。1番の証拠が、罪が目の前にあるではないか。これではまずい。そうだ、お風呂に持っていこう。お湯につけておけば、捨てやすくなるはずだ。急いで、それに触れる。肉が裂けた。痛い。パニックに陥りそうになりながら、もう一度触れてみる。よく見るとそれは、さっきの破片だった。さっき捨てたのに。水に流すだめではだめだったことを学んだ私は、それを口に入れた。こうすれば、私以外には見えない。気づかれない。目が覚めた。日光が眩しくて、目を閉じる。ふざけるな。せっかく、あいつを殺せたのに。罪を隠せたのに。誰にもバレずに、うまく行っていたのに。夢で終わらせないで

11/28/2024, 3:28:01 PM