階段を駆け上がって一気に浴びる熱。
マンション屋上はいつもどおり金網で囲われご丁寧に施錠されていたけれど、扉はあけることができた。
開けた薄い青空には、白い筋のような雲が張り付いていた。現在腹が立つほどくそ暑いけど、空だけは秋の気配がする。
金網ごしに、あぜ道をゆく自転車を見つけた。
「すずかー!」
赤いバッグを背負った女の子が振り返る。
「明日な」
口を大きく開けて、俺は彼女の名前を呼ぶ。声のボリュームを今更抑えた。
ご近所の庭仕事をしている爺様方もなんだなんだとキョロキョロしているのが分かったからだ。
すずかが脱色した髪をばさりとふるって笑った。飾りヘアゴムのついた手首を顔のそばで可愛く振っている。
「またね」
と、彼女が言ってる気がした。
「ばかね」とも見えて少しだけ胸がどきんとした。
明日からは毎日学校で会えるんだ。
9/1/2025, 11:26:48 PM