椋 ーmukuー

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アオイハル。誰もが平等に得られる機会の中に存在するたった数年。人生の何分の1にも満たない青春時代。

田舎や、田舎。360°見回してみてもなーんもない。そら、住宅が集まっとーとこにはスーパーだのドラッグストアだのはあるけども。私が住んどるとこには都会だと100m間隔くらいに建っとるコンビニさえないんじゃもん。つまらんよ、つまらん。
ただ、変わらんことと言えば私が通っとー高校の授業内容とかだけじゃろね。
「皆さんいいですか。ここは進学校なんですよ、進学校。言動には十分気を付けなさい」
なんて先生達は言っとるけど、本当の進学校は自分達で進学校なんていわんじゃろ。なんちゅーわかりやすい自称進なんだか。
まぁ、でも自称進とは言っても授業の進度は十分早いしまぐれで受かった私にはとてもじゃないけどついていけん。努力はしとるがどうにもならん。

青春。私もしてみたいなーなんてちょっと贅沢じゃろか。なーんもできとらん私には夢のまた夢やろね。って最近まで思うてたんじゃけど、中学ん時の同級生の佐藤って奴に告白されたんよねー。ほんまに夢見とるみたいじゃ。

『返事待っとるから。出来れば直接聞きたい』

既読無視。私も随分性格悪いもんじゃ。返信打とうとしても体は動かんし出来れば会いとーない。中途半端な私がもっと佐藤を傷付けることなんて目に見えとるから。

アンタのことは嫌いじゃないよ。ただな、ただ……

また続かん言葉を頭ん中で考えとる。青春なんていうんが楽しいだけじゃなくてお互いにこんなに苦しいなんて分からんかった。佐藤ん奴が堂々としとったあんなん、初めて見たんに。

このままじゃダメなんかな、お互い。

また私の性格の悪さが滲み出た音がした。

題材「青く、深く」

6/30/2025, 7:55:25 AM