深夜徘徊猫

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「冬晴れ」


「なんで海?」

 最近はずっと窓を覗くと真っ白。雪はずっとふわふわ人のことも気にせずに降りてくる。
 突然鳴り響く一件の通知。それは親友の葵からのものだった。

「今から海にいこうよ。」

 本音としては、こんな寒い日の中さらに海風にさらされるなんて勘弁だ。かといっても、やることはないので来てしまった。

「もう帰っちゃうの?伊織ちゃん。」

「うん。ごめんだけど帰りたいや。今日結構冷え込むし。」

「そっかぁ。」

こんな日に海に誘うのは流石に異常だとは自覚していたのかあっさりとした返事が返ってきた。

「でもさ、ちょっと見てよ。」

「なに?そっちまで行くともっと寒いよ。」

葵はちょっとした高台に登って海を指差した。

「あんなに白かったのに今じゃすごく青いよ。」

「そう?」

「うん。」

改めて海と向かい合った。
確かに雪ばかりで白くうつり過ぎていたこの風景は今はお日様に照らされてきらきら青に光っていた。

夏以外でもこんなに海に心奪われる日があるんだとなんだか私の心も照らされた気がした。

「で、もう帰っちゃうの?」

ここまで青い海を再認識した日はないだろう。

1/5/2025, 2:07:56 PM