陽葵

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#落ちていく

"あんな奴、やめなよ…"

そう、何度言われただろう。

自分の機嫌だけで、私の事を振り回す彼。
夜中だろうが、会いたいと着信が来る。
でも、私が会いたいと言った時に
彼の都合が悪いと怒鳴られる。
いつも彼の顔色を伺いながら、私はなんて事ない顔で
彼に笑いかける。

所詮、クズ男と呼ばれる部類に彼は属するだろう。
彼と付き合うまで、私は友達の立場だった。
何で別れないの?今、泣いているじゃない。

そう、友達に言った事さえある。
彼女達は揃って
でも、だって、と彼氏の優しさを話し始めていた。
第三者が何度別れろと言った所で結局は好きな気持ちがなくなる事はなく、別れる事は選ばなかった。

あの時は彼女達の事を理解する事ができなかった。
でも、今なら分かる。

彼の事が好きなのだ。
他人には無愛想な彼だから、
私にだけ心を許してくれているかのような笑顔が
愛おしくなる。
普段は怒鳴ってばかりいる彼だけど、何でもない日に
感謝の言葉と共に渡される一輪の花に胸が高鳴る。

私だけが彼を愛する事ができる。
私だけが彼の全てを知っている。

冷静になれば、
別れた方が正解だと言う事も分かっている。
それでも、彼の優しさに、笑顔に、
今度こそ別れ話をしなければという決意が消えていく。
これを依存というのだろうな。

朝の光に照らされ、
キラキラと輝く彼から貰ったひまわりの花に
彼の笑顔を思い出し、今日も私は彼へと落ちていく。


11/23/2023, 11:26:44 AM