わに

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肩に回された腕の重みや、服越しに伝わってくる体温。
勝気につり上がった口の端。その唇の形の美しさに、僕は何度も恋をしているのです。

同じ母の胎から、同じ日、同じ時間にうまれたというのに、僕と彼は少しも似ていませんでした。眉の濃さ、瞳のかたち、鼻の高さに、耳朶の厚み。僕とは正反対の彼の全てが、いつも輝いて見えていました。
憧れる日もありました。羨む日もありました。憎む日もありました。二段ベッドの、彼が眠る下。何も知らない呑気な寝息を聞きながら、涙を流す日もありました。こんなに違うのに、彼と僕に流れる血だけは同じでした。
──それらは確かに“呪い”でした。
僕はこの呪いを背負って生きているのです。誰に言うことも無く、決して悟られることのないように。

肩に回された腕の重みや、服越しに伝わってくる体温。
勝気につり上がった口の端。その唇の形の美しさに、僕は今日も恋をしているのです。



#ずっと隣で

3/13/2024, 12:59:06 PM