墓守

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朝。
瞼を開けると、ぼやけた世界が再起動する。
人の気配だけが脳裏に浮かぶ。とても不快だ。

忌まわしくあるが必要不可欠のこの瞳は、いつになっても外界を映すことを許さない。



窓から部屋の外を眺める。
まだ涼しげな春の風が頬にかかる。
鳥の鳴き声がする。恐らく、4羽。
あの鳥たちは当てもなく、空虚な空を飛び回っているのだろうか。

飛べるだけまだましなのかもしれない。


――なんで俺は、今日も生きているのだろう。


何時も何時も、朝になると考えてしまう。
死んでいった者達、殺した物達。それらの叫びが瞳に反射する。

でも、俺は足を止めはしないのだろう。

なぜならそれが使命だから。
それを出来ない俺に、長月五日に、価値はないのだから。


また、鳥の鳴き声がする。
破られた翼では、もうどこにも行けない。

『愛玩鳥の瞳』

11/11/2024, 1:12:31 PM