赤月

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その涙を見ると、どうしたらいいのかわからなくなる。

慰めればいいのは分かっている。
ぼろぼろと零れ落ちる雫を拭ってやればいいことも分かる。

けれども、それをしてやりたくない気持ちも確かに存在して。

「泣かないで」

その一言だけで精一杯だった。

それは、せめてもの警告。
これ以上自分以外の誰かのために泣くというのなら、こちらにも考えがあるという密かな警告。

己に意外にも存在していた仄暗い独占欲に内心驚きを覚えながら、どうやって涙を止めようかと思案する。

「まだ泣くんなら、キスして何も考えられなくなるまで犯すから」

結局口に出たのは、真っ直ぐな欲望だけだった。

11/30/2023, 6:00:06 PM