友人から、放課後に生徒指導室へ行くよう伝言を受けた。
私を呼び出したのは、大好きなあの人。
先週、私はその人の机にラブレターを入れておいた。
とても真面目で誠実なあの人の答えは分かっているけれど、どうしても伝えたかった。
自分一人の足音、部活に励む生徒の声、私の心臓の音。
不協和音のように重なり合い、私の緊張を高めていく。
早く会いたいけれど、分かりきった答えまでの時間を稼ぎたい。
それでも、校内はさほど広さがないため、苦労せず指導室についてしまった。
「放課後に呼び出してすまないな。」
開け放たれたドアの前で、緊張を落ち着けることもできず、あの人の視界に入ってしまった。
どうしよう、何を言われるのだろう。
体がどんどん冷えていく。
筋肉が石になったかのように微動だにしない。
冷や汗がこめかみをつたう。
「封筒返すよ。今までこんなことはなかったし、何を伝えていいか分からないけど、君は、今の君が一番素敵だと思うから。前を向いてがんばれよ。」
そう言って、職員会議だからと退室をうながされた。
…私は振られたのだろうか。
優しいあの人なりの励ましだろうか。
なんだか煮えきらないけど、案外あっさり受け止められた。
手紙はちぎって紙吹雪にでもしようかな。
そうして、私は屋上へと駆け上った。
お題:あの頃の不安だった私へ
題名:『封筒の中身は、右手と左目をうずかせ、世界滅亡を企てる大魔神を浄化させる乙女(私)の黒歴史小説』
5/24/2022, 12:47:32 PM