彼とわたしと

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「もう一度だけ、私と“手を取り合って”くれないか」

ぽろっと出た、独り言だった。前までのように、肩を寄せ合って同じ傘に入って、時には土砂降りの中で手を繋いで、朝日が私たちを照らす中で、歩幅を合わせて歩いてくれた君を、もう一度、隣で感じさせてはくれないだろうか。たしかに私だけの親友だったし、君の親友も私だけだった。ところで…。

ねえ、君はいつから、私以外の隣で笑うようになったの?その可愛い可愛い笑顔をいとも簡単に、私以外にも見せてしまうようになったの?いつからか君は、会話も、相槌をも上手くなってしまったのね。それは全部、私との対話で培った力じゃなかったの?私以外と会話している君は、随分と楽しそうね。そのほかほかした笑顔、全部私だけのものだったらよかったのに。

友人だと言い訳して好きだと嘆いていたけれど、もう、後戻りできないほどに君を愛している。もう少し、君の言い訳も聞いた方が良かったのかも知れないね。「こんなこと、やめよう?好きで話してたわけじゃないし、私にとってはずっと貴方だけだよ、」

嘆く君はそう言ったけれど…、ここまで私を寂しくさせた君が悪いのよ。友情か愛情かなんて、ここではどうだっていいこと。ここには2人だけ、永遠を誓える。なのになんでそんなに悲しそうな顔をするの?。あんなに愛しい君も、なんだか冷たくなってきちゃった。もうほかほかには戻れないけど、これからずっと私だけの君に戻るのが、私は嬉しくてしょうがないんだ。夜明けの風を浴びながら、ひんやりとした君の手を取ってみる。

7/14/2024, 12:21:13 PM