駄作製造機

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【太陽の下で】

私は1000年生きている吸血鬼。

もちろん夜型で人の血も吸って吸って吸いまくる。
ニンニクは嫌いで十字架も苦手。

いたって普通の吸血鬼だ。

いつも黒いカラスが住む大きなお城に独りぼっち。
でも退屈だと思ったことはない。

ここに度胸試しに来るやからを揶揄う事ができるから。
街の人間の間では吸血鬼の噂はもちろん、城に住んでる私を討伐しようと兵士をよこされた時もあった。

まあ、全員血を吸って栄養にしたけど。
紹介しているうちに度胸試しに何人か武装した人間が来た。

『ね、、ねえ僕帰りたい、、』
『うるせえ!置いて行くぞミョーセル。』
『さっさと来いよ。』

1人は少し伸びてる髪を後ろに縛って丸メガネをかけている。

1人は短髪でいかにも戦士っぽい。

もう1人は髪を真ん中でわけてチャラチャラした印象だ。

城を汚される前に気絶させて血をもらおうかな。

私はコウモリの様に天井のシャンデリアに足をかけて逆さまになり、3人固まって進んでいく団子を見つめる。

『シキャー、、シキャー、、』

1・UMAの様な奇声をあげて驚かす。

『ぎゃああ!カラス?コウモリ?!怪物?!?!』

2・窓ガラスをわざと割り、コウモリを驚かし操って暴れさせる。

『コウモリだ!!逃げろ!!』
『ま、まま待って!置いていかないで、、』

3・玄関の扉を閉めて閉じ込め、逃げ場をなくす。

『なっんで閉まってんだよ!!』
『早くぶっ壊してでも逃げよう!』
『うわああぁん、、怖いよぉ、、。』

スタッ

3人固まっている前に降り立ち、私は姿を見せる。

『だ、、?!』
『ヒッ、、』
『あばばばば』

3人とも震えて喋れない様だ。

『さぁて、、誰から吸われたい?』
『ギャアアアアアアアアア』

答えをやるはずもなく、1番筋肉質なやつを拘束し血を吸う。

『ん〜、、普通。』

2人目もさっさと血をいただき、3人目。

『こ、殺さないぇ、、』

相手は後退り、私は近づく。
腰が抜けているので逃げられず、捕まえやすい。

ガリッ

『ぎゃうぅっ!!』

ジュルッ
チュル

、、格段に美味い。
私好みの血の味だ。

うーん、、死なせるのは勿体無いし、、

首から口を離し、男を見る。

細い体躯に潤んだ瞳。
ふるふると震え、息が上がっている体。

1000年生きてても体験したことのない感情が湧き上がってきた。

コイツを側に置きたい。
直感でそう思った。

『、、、お前、名は?』
『み、、ミョーセル、、』

2つの牙の跡から血が出ている。
そこを指で押さえながら男の頬に手を滑らせる。

『ヒッ、』
『大丈夫。痛い様にはしない。ただ、、お前を側に置きたい。お前の血を永遠に飲んでいたい。』

そう言うと、目を見開き固まった。

『返事は?』

そう言うと、コクコクと首が千切れるくらい頷いた。
そこから、ミョーセルと私の生活が始まった。

『ミョーセル、太陽ってどんなものだ?』
『大きくて、あったかくて、神様みたいです。』
『、、、そうか、、。私も太陽を見てみたいな。』

吸血鬼は太陽に当たると死んでしまうから、いつか太陽を見たいという夢は叶いそうもないな。

2人の生活は意外にも楽しいものだった。
ミョーセルは毎晩私に血を飲ませ、外の話をし、私はミョーセルの衣食住を保証する。

まさにgive &takeの関係だ。

ーーー

今日は私の1027歳の誕生日。

ミョーセルは買い物に出かけており、腕を奮って料理すると意気込んでいたから楽しみだ。

鼻唄を歌いながら暗い部屋でミョーセルを待つ。

今日は特別な日だった。
別の意味でも。

ーーー

僕が帰ってくると、妙に城が騒がしく、何故か胸騒ぎがした。

慌てて城の中に入れば、聖女様と騎士達が化け物だと言って何かを取り囲んでいた。

何か、、それは1つしかない。

『ユーリさん!』

その輪の中にむりやり入り、中心に横たわっていたユーリさんを抱き起こす。

あちこち切り傷があって、聖女様の浄化能力なのか少しだけ弱っていた。

『おい吸血鬼。この者は仲間か?』

殺気を含んだ視線を感じ、体が強張るけど、逃げたい衝動に駆られるけど、優しくて聡明で僕の話し相手になってくれたユーリさん、、僕を認めてくれた唯一の光を見捨てられない。見捨てたくない。

『そ』
『違う。コイツは私が飼っていた人間だ。コイツは、、ゴホッ、血が美味いからな。』

そうだと肯定しようとしたら声をかぶせられた。

『だからコイツは関係ない。』

ユーリさんは僕の手を払ってよろよろと立ち上がった。

『、、、そうか。サリー様、トドメを。』
『はい。』

聖女様の手が光り、ユーリさんに当てられる。

『待って、、待ってください、、』
『ミョーセル。ーーーーーー』

僕はその場に崩れ落ちた。
聖女様と騎士は動物を駆除したみたいにさっさと引き上げていった。

『ぅっ、、うぅ、、ユーリさん、、』

床に涙のシミができては消える。

"好きだ。"

ユーリが口パクで伝えた言葉は、これだった。

『、、、次は、太陽の下で。貴方が、綺麗な太陽を見れる様に。』

ミョーセルはユーリの輪廻転生を願い、今もこの城に住み続けている。

50年後。

『おじいちゃん、このお城にずっと住んでるの?私のなのに?』

お城の前で掃き掃除をしている老人のもとに、幼女がかけより声をかける。

『え、、?』

老人は手を止め、まさかと振り返る。

『ふふふ、、ミョーセル。ずーーっと会いたかった。』

幼女はイタズラっぽい笑みと、慈愛の目で老人を見つめる。

『っ、、、ユーリさん、、僕もです、。』

老人も愛おしそうに幼女の頭を撫でた。
2人は太陽の下で、再会を果たした。

11/25/2023, 3:18:33 PM