灰田

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では1年後、また会いましょう。
そう言ってふたりは、あちらとこちらに分かれて歩き出す。
天の川の星々はまたふたりを隔て、シャラシャラと音たてて冷たくきれいに流れてゆく。
そんなことを言っても、雨が降ったらおあずけでしょう。
1年後だってちゃんと会えるかどうかわからない。
晴れてくれるかわからない。

織姫と彦星は心の中でお互いに手を伸ばし、涙で霞む恋人の顔を今を限りと見つめる。
悲しみは誰にも見せない。昂然と頭を上げて。
いつか自由に会える日が必ず来る。
罪という罪が許される日が来る。
だから………

轟々と音たてて流れる天の川を振り返る。
ああ、もうあのひとが見えなくなってしまった。
あの声も姿も温もりも、胸に焼き付いている。
ほんの少し前まで目の前にいたのに………
…こんなにもずっと引き裂かれていなければならないなんて。
ふたりは天の川のあちらとこちらで、双子のようにそっくりな表情でくちびるを噛む。
らんらんと星のように輝く怒りをたたえた目が、
涙でキラキラ光る。

次に会う日までそのきれいな怒りが、
星々の水の隅々にまで、またキラキラと行き渡って行き…

その怒りに隔てられてふたりは立ち尽くす。
…ふたりは知らない。その搾取された怒りの心が利用されていることを。
隔てるものに力を与えお互いを見えなくさせていることを。

ただそれに気付きさえすればもう二度と離れない。


6/24/2024, 10:51:21 AM