白井墓守

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『涙の理由』

「人は何故、涙を流すのだと思う?」
「は?」

「悲しいから? 嬉しいから? 感動したから? 目に砂が入ったから? 心が限界だから?」
「こんなときに、いったいなんなんだ……」

「いいから、答えて」
「…………寂しい、から?」

「そう、君はそう答えるんだね」
「だから、なんなんだよ、こんなときにお前は」

親友である彼はくるりと振り返って俺の方を見てくる。
その顔には、一雫の涙が目から零れ落ちていた。

「お前、泣いてるのか……?」
「ねぇ。僕が泣いているのは、なんでだと思う?」

「……は?」
「考えてみて」

そう言って、アイツは不敵に笑うと列車に乗り込んだ。
思わず伸ばした手は空をきる。

○○○

それが十年前のこと。
アイツは転校して、一度も連絡をとって来なかった。

だが、今日。ようやく、アイツと再会出来る。

転校したアイツが、いったい何で泣いていたのか、俺は今でも考え続けている。
まるで、呪いのようだ。

アイツが待つ扉の前。
俺は大きく一呼吸すると、覚悟を決めて扉を開けた。
――涙の理由を知るために。



9/27/2025, 4:42:36 PM