沫雪

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#花束

「好きな花ってなに?」
「花かぁ、柄じゃないんだよなぁ」

尋ねると困ったように笑った。

「わかる。花より団子だよね?いや、花よりプリンか」
「なにー?生意気なんだから!じゃあ、夕飯はあなたの嫌いなものフルコースにしまーす!」
「待って!ごめんて!」

軽口が随分裏目に出てしまった。


あれから何年経ったのだろう。
ずっと好きな花も知れないままになってしまった。

「誕生日くらい、好きな花あげたかったな。紫好きだったから、スイトピーにしてみたけどどうかな?かあさん」

花屋の前でしばらくあたふたしてたのは秘密だ。
バレているだろうけど。
あの人なら絶対ニヤニヤしながら見ていそうだ。

「好きだったケーキ屋のプリンももちろん買ってきたぞ!お供えするから一緒に食べような」

花束っていけるのも中々難しいな。
どうすれば綺麗に見えるかな?
あれ?仏壇から綺麗に見えた方がいいのか?
どっち向きだ??

焦れば焦るほどゲラゲラ笑うかあさんが想像できた。
「慣れないことするから!」じゃないよ!まったく。
こっちの気も知らないで、あっさり逝くんだから。
事故だから気を揉む時間すら無かった。

ムカつく。

「息子の初めて買った花束貰うなんてかあさんも幸せだな」
「え?そう言う初めては彼女にしてやれって?いねーよ!残念!お前の息子モテないんだよ!うるせー!」

なんかひとりで盛り上がりすぎかもしれん。
ヤバい人みたいだ。

「また何か供えてやるから、夢の中で良いから欲しいもの教えてくれよな」

「もっといっぱい話したかったな」

きっとすぐケンカになるだろうけど。

2/9/2024, 12:39:40 PM