過去に帰れるのなら……なんて、そんなあり得ない話を、誰もが一度は考えた事があるだろう。
日常生活を平和に送る為に、日々社畜と成り果てた僕の姿を、止まりたくても止まらない時間の流れのように、次々変わる景色と一緒に、ガラスに映るその目と目が合う。
こんな疲れ果てた今の自分が、過去に帰ったところで、ヒーローのように颯爽と動く事が果たして出来るのだろうか。
渦を撒きそうになる気持ちを断ち切るように、車内アナウンスがタイミングよく流れた。頭上の路線図を、再度間違っていないか確認する。
出来きるのか ではない。
やるしかない のだ。
そして、もう一度腕時計を見る。確かめる。
午後17時前。
何とか今日も、仕事を切り上げる事ができた。
未来を変えれた。
ほんの些細なことかも知れないが、それでも、変える事ができたのだ。
だったら、もう迷う暇などない。
“人生は一度切り”なんて言うけれど、あれは嘘だったのかも知れない。
目が覚めたら、見慣れた天井に頭を巡らせ、日課になっていた物に目を向ければ、めくり終えた筈の日付を指す日めくりカレンダー。
信じてもらえないかも知れないが、どうやら僕は、タイムリープしてしまったようだ。
いや、僕自身も当初は信じることができなかった。
だが、迫る期日よりも余裕あるループをする事ができたようで、記憶力が割と良い自分は、数々の一致に唖然とし、納得せざるを得なかった。
これから変えようとする事は、何が起きるか分からない。
変えた先の未来が明るいとは限らないし、成功するかも分からない。
そもそも、顔も知らない相手だ。
それなのに“友人”と思っているのは自分だけかも知れない。
助けられたとしても、恨まれるかも知れない。エゴかも知れない。
それでも…
君がくれた言葉で、僕は確かにあの時救い上げてもらったのだ。
一時的だろうと。
あの瞬間。
確かに、光を見たのだ。
約束したのだ。
君が言った
『日常的に少し困ることもあるけれど、窓の外から見える景色がとても好きなのだ』
その景色を
いつか一緒に見ようと…
目的地が近付いてくる。
トンネルを潜り揺れる車内は、深海のような不思議な静けさを感じる。
緊張から、手すりを握る手が冷たい。
紛らわすように、力を込める。
目を閉じて、意識を研ぎ澄ます。
エゴだって、構うものか。
君が助かるのなら。
あの日、画面越しに観てしまった日。
どうして、君なんだ と思った。
どうして、僕じゃないんだ と思った。
そんな想いは、もう二度と
〈叶うのなら、せめて、〉
全てを直してくれなくて良いからお願いです
どうか
君だけは
(どうしても、思い出してしまうもの。綺麗な部分だけ想い出せたら、幸せなままでいられるのに。事実は消えない。嫌でも、ニュースで流れ、気持ちを掘り起こされる。こんな物を君が読んだら、逆に怒るかも知れない。でも、願わずにはいられないのだ)
3/24/2025, 8:47:02 PM