それでは次のニュース。
『日差しチャレンジ』でまた悲劇が起こりました。
本日午後一時頃、住宅街の公園で『日差しチャレンジ』をしたと思われる、吸血鬼が5人見つかりました。
一人は今も意識不明の重体、他四人は完全に灰になり、現地で死亡が確認されました。
若い吸血鬼の中で流行している『日差しチャンレンジ』。
日光に弱い彼らがわざと太陽の元に身を晒すことで、自らの勇気を示す度胸試しが、この『日差しチャレンジ』。
一種のステータスなのか、SNSでは『日差しチャレンジ』の写真がずらり。
ですが吸血鬼にとって、太陽は天敵……
太陽の危険性を十分知っているはずなのに、今回のような事故が後を絶えません。
なぜ悲劇が止まらないのでしょうか?
今回、この謎に迫るため、専門家の方にお越しいただきました。
元ヴァンパイアハンターのジャックさんです。
ジャックさん、こんにちは。
「こんにちは」
ジャックさん、なぜこのような悲劇が止まらないのでしょうか?
「はい、これには吸血鬼を取り巻く事情が変わったことが挙げられます」
と、言いますと?
「まずSNSの普及ですね。
これによって簡単に自らの存在を誇示することが出来るようになったのです」
吸血鬼は目立ちたがりなのですか?
「これに関しては人間と同じ、と言っておきましょうか。
彼らも元は人間……
承認欲求が強いのです」
なるほど。
「二つ目は令和になり、吸血鬼の安全が確保されるようになったことが挙げられます」
それは関係なさそうに聞こえますが……
「いえ、関係あります。
昔、吸血鬼というものは、駆除の対象でした。
そしてそれに対するハンターがいました。
それらを返り討ちにすれば、人々の噂になります」
そして承認欲求が満たされると……
「はい。
ハンター側も、富と名誉が得られる……
ある意味でwin-winな関係でした」
そうだったんですね……
「3つ目の理由に、人間と吸血鬼、双方の価値観が変わったことが挙げられます」
価値観ですか?
「『暴力沙汰はご法度』という価値観です」
なるほど、それは分かります。
今は令和の時代。
ハンターが吸血鬼を狩っても、逆に吸血鬼が返り討ちにしても、避難の嵐でしょうからね。
「その通りです。
そして吸血鬼も目立ちたがりとはいえ、こういった避難の嵐に巻き込まれるのは本望ではありません。
そこで考え出されたのが、血を流さない『日差しチャレンジ』という事です」
なるほど。
よく分かりました。
ですが将来有望な吸血鬼が亡くなる悲劇が続いています。
悲劇を防ぐため、なにか有効な手立ては無いのでしょうか?
「残念なことに対策は難しいと言わざるを得ません」
それはなぜでしょう?
「先ほども言ったように、承認欲求を満たすには最適だからです。
天敵にあえて身を晒す……
これ以上、勇気の必要なことはありません。
それに……」
『それに』?
「私は生存者に聞き取り調査を行った事があります。
この問題に新しい切り口が無いかとね……
そして彼らは、口を揃えて言いました。
『最初は恐怖しかないが、時間が経つと最高にハイってやつになる』と……」
ハイに?
「はい……
つまり彼らにとって、娯楽であると同時に、宗教的な意味を持つのです。
彼らは灰になることでハイになるのです」
そうだったんですね……
問題は複雑のようです……
おや、もう時間ですね。
ジャックさん、解説ありがとうございました。
それでは次のニュース。
動物園から嬉しい知らせです。
世界で初めてチュパカブラの繁殖に成功したと――
7/3/2024, 1:34:44 PM