もし、お前が·····。
たとえ嘘でも悪いのはあの女だと言ったなら。
あの女が誘惑してきたのだと言ったなら。
私はあの女を放逐してお前を許していただろう。
それがたとえ嘘だとしても。
あの女の命を救う為の方便なのだと分かっていても。
私の歪で卑屈な劣等感を、ほんの僅かな間だけでも忘れてしまうことが出来ただろう。
そうしていれば、お前にあれ以上の憎悪を抱くことはなかった。
あの女を視界から追いやってしまっていれば·····。
ああそうだ。
誰よりも私こそが。
本当はお前という存在を·····
失いたくなかった。
END
「ひそかな思い」
2/20/2025, 4:07:25 PM