いろんなタイプの「優しい」が、星の数だけ存在することと思う物書きです。
作る優しさ、触れる優しさ、飲ませる優しさに優しさの料理、優しさの空回り。
その「優しさ」がお題とのことなので、おはなしをひとつ、ご紹介。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの法務部執行課、実動班特殊即応部門は、
まさかの全員、言葉を話す不思議なハムスター。
小さな体であっちこっち走り回り、様々な危ない組織に潜り込んで、あらゆる情報を取ってきます。
今回のお題回収役はそのハムズの中の、
ジャンガリアンだかロボロフスキーだか、ともかく灰色ハムスター、「ムクドリ」。
ハムなのに鳥類の名前です。
細かいことをきにしてはなりません。
管理局はビジネスネーム制を敷いており、
法務部に属する局員は、それが人間でもドラゴンでも宇宙タコでもハムスターでも、
全員、鳥類の名前を貸与されるのです。
で、とっとこムクドリのおはなしです。
ムクドリはその日もカラカラしゃーしゃー、
ネズミの回し車によく似た不思議アンティーク器具をとっとことっとこ回しまして、
それによって、1杯分のグアテマラコーヒー豆を、カンペキな温度管理でもって焙煎中。
ムクドリは自分の体の温度を、
零下は液体ヘリウムほど、高温は液体タングステンほど、すなわち極低温から業火まで、
0.1℃単位で調整できるハムスターなのでした。
すなわち1杯1杯のコーヒー豆を
そのコーヒー豆が最も香り高く、最も味わい深く、最も雑味の少ない温度でもって、
とっとこ最適に、焙煎することが可能なのです。
とっとこムクドリはここ1〜2年、コーヒー専門店の店長にして唯一の店員。
売り上げが目標金額に到達するまで、店から出してもらえません。
というのもとっとこムクドリ、
本物の魔女のおばあちゃんが経営する喫茶店の
あの家具そのコードあれこれかじって
魔女のおばあちゃんの堪忍袋の緒までぶっつん
一気に噛み切ってしまいまして。
『ここで修理費を返済なさい』
魔女のおばあちゃんはムクドリを、
世界線管理局内に建てたコーヒー専門店の中に
魔法でもって、閉じ込めてしまったのです。
あらタイヘン
(返済すれば出られるという優しさ)
まぁタイヘン
(お題回収完了)
「なにが優しさだよ、ちくしょう!」
ギーギー!ぎーぎー!
とっとこムクドリがキレています。
「僕たちハムスターはハムスターなんだぞ!
硬いものを噛みたくなるのは、本能だぞ!
なのにこんな、こんなッ、虐待だ!」
ギーギーギー!ちゅーちゅーちゅー!
魔女のおばあちゃんの財産に、●桁円単位で損害を与えたムクドリが、罰の減刑を求めt
「借金返済して!ここから出たら!
仕返しにあいつの店のテーブルをかじってやる!」
減刑を求めてるんだか更なる罪を重ねる宣言だか
もはや不明な絶叫をしています。
「あのですねムクドリ。そろそろ戻ってきてもらわないと、我々も困ります」
はいよ!グアマテラのブラックおまち!
ムクドリから焙煎したて、挽きたて、淹れたての3たてコーヒーを受け取って、
ムクドリと同じ法務部所属、実動班特殊即応部門の人間男性・ツバメが、
最高のコーヒーで唇と喉を湿らせて、言いました。
「もう少しこう、彼女への復讐ではなく、
優しさと寛容の心で、ですね」
「監禁ハンタイ!脱借金!」
ギーギーチュー!
とっとこムクドリはプンプン。
次のお客のコーヒー豆を焙煎器に入れて、
自分の借金を減らすために、またガラガラちゅーちゅー回し車型焙煎器を回し始めましたとさ。
1/28/2026, 4:25:29 AM