サチョッチ

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夢を見た。
見知らぬ場所で男に抱かれる夢だった。
男は身なりの良い紳士という感じの者で、私を人知れず可愛がっていた。私は彼の存在の温かさに惹かれ、身を寄せていた。
男の寝室と思しき部屋のベッドの上で、私は彼に愛された。そっと唇を吸われ、身体の柔らかな部分をなぞるように指を這わせる。私は始終無抵抗のまま、じわじわと込み上げるときめきと悦楽を噛み締めていた。私を見つめる男の目は優しい光に濡れ、頬を僅かに赤らめていた。
目が覚めるといつもの自室だった。既に日が高く昇った窓は陽光が漏れ入っていた。階下のリビングへ向かいテレビをつけると、連続殺人事件のニュースが飛び込んできた。犯人は未だ見つかっていないが、いくつか共通の目撃情報があった。なんとなく、私が夢で会った男に特徴が似ている気がした。
もちろんただの思い込みなのだろうが、得体の知れないざわめきが胸の奥に湧いては消えていた。
もしも夢の中の男が現実に存在する相手だったとしたら、その人がどんな人間であれ、私にはあの男と出会うときが遅かれ早かれ来るのだろうか。知らず知らずのうちに、彼は見えない何かに導かれるようにして、少しずつ私との距離を縮めているのかもしれない。

ここではない、どこかで息を潜めながら。

4/16/2023, 12:47:06 PM