彼岸花

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20歳

幼い頃に約束した
幼い子供ながらの口約束
子供の約束なんて覚えているわけがない
「20歳になったらここでまた会おう」
大好きだったアイツとの約束
幼いながらに抱いた恋心
初恋がアイツだなんて笑っちゃうよね
あれから月日が経って
互いに別の道を選んで
そんな約束なんて忘れて
気が付いたらもう20歳になる頃だった
そんな時に思い出した約束
懐かしくなった
寂しく感じた
泣きたくなった
もう覚えていないだろうって
期待と不安をもって約束した場所に行く
誰もいない
分かっていた
誰も来ないって
帰ろうとした時に足音が聞こえた
あの時と同じような足音
少し大人びたように歩く彼が目に入る
嗚呼
覚えていてくれたみたいだ
泣きそうなのを我慢していると
彼は大木の下に花束を置く
泣きそうな彼の顔
『泣かないで』
そう手を置こうとして
  手が彼をすり抜ける
やっぱり触れなかった
会う前に病気で死んでしまった
自分が憎く感じる
「約束覚えてたよ」
静かに呟く声が聞こえた
「会う前に死んじまうってちょっと悲しいけど」
「こうやって約束したのは守れただろ」
彼が言った
泣きそうで
悔しそうで
辛そうで
だけど
楽しそうで
嬉しそうで
その言葉で救われた
どれだけ自分を憎んでいた心が
彼のその言葉で救われた
「また会いに来るよ 」
「次の約束をしよう」
《今度生まれる時は》
《ずっと一緒にいよう》
その言葉を聞いた時
身体が暖かくなるのを感じた
自分を見送るように彼と目が合った
そんな気がした
約束するよ
来世こそ
一緒に20歳で会えますように

1/10/2026, 11:49:45 PM