汗水垂らして、とか、パワハラ上司に頭下げて、なんて旧世代の働き方は終わった。
今は記憶を売って金を得る時代だ。
特別な『装置』に一定期間の『記憶』を吸い取らせて、その価値に見合った代金が支払われる。
売った記憶はまた別の誰かに買われて循環する。
特に好まれるのは、子供時代の幸せな記憶だ。両親に愛されて一緒に遊んだ記憶なんかは、虐待を受けた記憶を二束三文で売った奴に買われて、幸福な記憶にすりかわる。
誰かの幸せに寄与して、私にはがっぽり金が入るんだから、win-winの関係でいいじゃないか。
ある日、また記憶を売りに行った。ダイヤの指輪が欲しいと言う妻の願いを叶えるため、まとまった金が必要だからだ。
記憶を吸い取ってもらって、金を受け取る。
そして店を出たところで、ふと立ち止まった。
はて、ダイヤの指輪が欲しいと言ったのは、誰だったろう?
2025/03/26 記憶
3/26/2025, 12:39:56 AM