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真っ青な空の下。授業中の屋上という箱庭に、今日は僕以外の客人が訪れた。
「サボりか?」
「あなたこそ」
綺麗な長い黒髪をなびかせた客人は、僕の隣にスンと座る。真面目そうな面して僕と同類なのだろうか。
「先生が心配していたぞ。2-3橋本 尚クン?」
ギクリ。肩がはねる。
なんで僕の名前を知っているんだ。同クラスでもないし、そんなに有名人でも無いのに。
「ははは。人間関係を友好に進めるためさ。全学年のクラスと名前を覚えるくらいわけない。
そんなことより、サボりをする時は事前に誰かにいいたまえ。君の担任が心配していたぞ」
すごい事をさらりと言い流し、僕の目先に(正確に言えば僕のメガネの先だが)指を突きつける。
ほんとに何者なんだこの人。
「そういうあなたはどうしてここへ?」
「あぁ。3組にサボり魔がいると聞いてな。気になって付いてきた」
「なんですかその理由……」
「それに」
隣でひょいと彼女が立ち上がる。
「サボりも悪くないな。気分がいい!」
挙句にはふんふんと鼻歌を歌いながらそこらでくるくると回る。彼女の影がゆらめく。強い日差しで一瞬彼女が消えたように思えて、慌てて数回瞬きした。
「君が毎回屋上に来る理由が分かった気がする!」
踊りながらそう言って、彼女は笑う。
理由?理由か……ただ、僕には退屈だったんだ。閉鎖的な空間で受ける授業が。あの気だるくて生ぬるくて苦痛とも言える時間から解放されたかった。
そんな僕の漠然とした理由を言えば、彼女はまた笑うだろうか。
「何をぼーっとしているのだ?」
彼女が踊りをやめて、こちらに手を差し出す。
「一緒に踊ろうじゃあないか」
僕は別に屋上に踊りに来たわけではないが……ニヤリと笑う彼女を前に、断るのは野暮だろう。
僕は「喜んで」と恭しく頭を下げ彼女の手を取り、青空の下のステージへと上がった。

10/4/2023, 2:19:17 PM