赤い糸
「俺、彼女出来たんだ」
「……部活のマネージャーの子?」
「うん、そう」
そっか、それなら良かった……。
「おめでとう」
俺はホッとして、そう言えた。
「うん、ありがとう」
目の前の彼は幸せそうに笑うけど。
俺は知っている。
その幸せが長く続かないことを。
俺には、運命の赤い糸が見える。
自分のも見えるし、彼のも見えていて。
俺のも彼のも、誰に繋がっているのか、その先はわからないけれど。
でも、少なくとも。
最近付き合い始めたという、マネージャーの子と彼の赤い糸が結ばれていないことは、見えていて知っている。
そして、俺と彼の糸が繋がっていないこともわかってる。
もし、彼の糸と繋がった運命の相手が現れて。
彼に幸せそうに紹介されたとしたら……。
俺はその時も笑って、おめでとうと言えるのかな。
俺に運命の赤い糸が見えるだけじゃなく……切ることも出来るとしたなら、俺は。
彼と結ばれた、運命の相手の糸を引きちぎってしまいそうで怖いんだ。
それで、彼が幸せになれなくても。
俺と彼が絶対に結ばれないとわかっていても。
俺は君を愛しているんだ。
こんな身勝手な俺にも、赤い糸が繋がった運命の相手は、ちゃんといるのだろうか。
だとしたら、どうか。
早く現れてほしい。
俺が、彼の幸せを断ち切る、なんて愚かな罪を犯してしまう前に。
End
6/30/2024, 11:35:48 PM