「灯火を囲って」
永遠ってなんだろう。
数週間と続いた吹雪は、気づけば京の都を覆い尽くしてしまった。雑音が混じるラジオは、永遠に続くかもしれません。そう言っていた。
無数の人で賑わうこの道も、ただひたすらに白く、しんどい程に静けさが終わらない。それでも二人で種をまいていった。すぐに消えると言うのに。
「ここで夜を明かそう。」
この吹雪がなかったら、この建物は趣のある、そう謳われていたのだろうけど、今となってはただ古いだけだった。けれども、雪の染みた薪を集めて火をつけるよりは、囲炉裏を囲んだほうがマシだった。
「...こんな状況じゃ、東の都は使えないだろうな。」
薪を渡して、囲炉裏の近くに座る。
どこがマシなんだろうね、そう思ったけれど、これが永遠なら、どこも変わりないかもしれない。
「いっそのこと、ここでも良いかもな。こっちのほうが面白い。」
パチパチと囲炉裏が鳴る。顔を見ることなく、ただ目の前の灯火を見つめた。
「...じゃあ、一刻後に。」
そう言って彼から時計を渡される。引き戸が跳ねる音がする。ため息をつく。
ボストンバッグから本とネジを取り出して、時計のチェーンを外す。本当は秒針が良いのだけれど、まだやることが残っているし、仕方ない。
時計を置いて、本のページを捲る。強く引っ張って、本には凹凸が残った。ページの一節を見て、思わず笑ってしまう。
囲炉裏を花で囲って、チェーンとページを軽く燃え尽きた炭火に放り投げる。残った花を更に火に捨てる。
都からひとつの火が消えた。月明かりが反射する。
「終わった?そう。じゃあ、次の場所に。」
ガラガラと引き戸が動いて、彼は囲炉裏の炭火から白い宝石を取り出す。キラキラと光るそれは、いつも通り冬の輝きを込めている。
ボストンバッグに本をしまって、時計を彼に返す。引き戸を閉めて、また新しい道を歩き出す。もうこの土地に用はない。
この吹雪が永遠なら、私達はなんだろう。雑音が混じるラジオは、数週間後には吹雪は止むでしょう、そう言っていた。
11/7/2025, 12:06:14 PM