"誰か"溺れるような苦しみに、手を伸ばす。誰か、誰か。伸ばした指先がカツンと硝子に当たった。あ、そっか。誰か、なんて、いないのか。そこで、目を覚ました。明けても醒めても薄青く染まった悪夢の中で、どこにも行けずにひとりきり。ただじっと息を殺して。苦しみが、悲しみが、やがては諦念へと変わっていくまで、ぼんやり天井を眺めていた。
10/4/2025, 4:27:32 AM