美冬

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ところにより雨


お腹、すいた。。。
前の食事から何時間経ったのか忘れてしまった。そんな精神状態でも身体は律儀に空腹を訴えてくる。

買い置きの棚には、食欲をそそるものなど何一つなかったが、とりあえず、手前のピンクのパッケージを手に取る。

「春雨スープ、かぁ。。。」
ひとり口に出た言葉が存外大きく響いて、気分が悪くなる。とりあえず今の気分を切りかえたい。
電子ケトルのスイッチを入れて、お気に入りのカーテンを数日ぶりにサッと開ける。
すると暖かな光が差し込んで…来るわけもない。音で気がついてはいたが、今日も雨だ。なんなら1週間連続のロングラン。
「春雨はいたくなふりそ、桜花まだみぬひとにちらまくもをし」
今度は小さく呟いたので、先程より勘に触らなかった。
春の雨よ、そんなに強く降らないで。桜をまだ見ていない人がいるのにちってしまうのはいやだ。

嫌。いい加減LINEのひとつでもよこさないと、私の愛は枯渇してしまうんだって、なんであいつは思わないのだろう。どうせあの能天気には、こんな雨などないも同じ。しとど濡れるのは私の方だけだ。

むしゃくしゃと春雨をすすったら、舌を火傷した。雨にまで裏切られたようで尚更腹が立つ。
もう、やめよう。あいつとは。

いつの間にか、ウトウトしていた。仕方ない、最近ほぼ眠れていなかったし。
目の前の少し減った春雨スープは見るからに覚めていた。
カーテンの向こうは青空に虹がかかっていた。言葉をなくした刹那、インターフォンが鳴った。

合鍵を渡しているのに部屋番号を覚えていない薄情な男を、部屋にあげるべきか否か。あなたならどうする?

3/24/2024, 2:19:55 PM