時を告げる
早く起きなさい。また遅刻したらどうするの。 母親が言う。
はあい。 娘が答える。
まったく。もう高校生なんだから自分で起きなさいよ。
わかってるよ、もう。朝からガミガミ言わないで。
僕が7回鳴いたあとの、よくある朝の光景。娘はこのあと、猛スピードで朝食を食べ、駅というところへ走っていく。
母親の方は、神棚に手を合わせ、娘の1日の安全をお祈りする。このお祈りのことを、娘のほうは知らないようだ。
いつもの朝だ。
ある日。
親戚のお葬式ができちゃったから、お父さんとふたりで行ってくる。泊まってくるから。ちゃんと自分で全部やってね。
うん。わかった。 娘は元気に答えた。
朝。
案の定、娘は眠ったまま。ぐっすりだ。
夜遅くまで、珍しく机に向かっていた。どうやら今日、学校で、期末試験というのがあるらしい。
……全然起きないけど。大丈夫なのかな。
そう思いながらも、僕は僕の仕事を始めた。
ポッポ、ポッポ、ポッポ、ポッポ、ポッポ、ポッポ、ポッポ。
7回。
娘を見た。聞こえているはずだけど、まだ寝てる。大丈夫なのか、期末試験とかいうのは。
……しょうがないな。 僕は意を決して、
ポッポ、ともう一度鳴いた。
ん、んん~。えっ?はっ?いま、8回鳴いた? 僕はもう扉の中に戻っているが、娘の声色から、青い顔をしているのは想像できた。
なんだ、7時か。気のせいか。あせった〜。 あ、起きなきゃ。 バタバタと慌ただしく準備して出かけていく。
やれやれ。
僕は神棚の方に意識を向け、娘の期末試験とかいうのが無事に終わるのを、母親の代わりにお祈りした。
9/6/2024, 11:41:10 PM