▶123.「question」
122.「約束」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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「残ってるとこには残ってるもんなんだな」
過去の遺物ってやつがよ。
いや、こいつらにとっては過去じゃねぇんだな。
過去と現在との連続性の不思議に思いを馳せながら、
シブは、今聞いたばかりの話を噛み砕いて考えていた。
◇
花街の女、子猫のところから出発した人形たちは、請け負った配達をこなしつつ、仕入れ屋シブのいる町まで来た。
シブはまだ仕事始めをせずに家で過ごしていたため、簡単に会うことができたのだった。
人形としては、自分の不注意で発生した怪我の修復に付き合わせた上、正体を周りには秘密にするという重荷を背負わせてしまったので、まだ蟠りがあるかもしれないとも考えていたが、
当のシブ本人は、
「おう、久しいな。入れよ」
軽く迎え入れてくれた。
✕✕✕が土産であるサボウム国で購入した香辛料をシブに渡すと、
さらにイレフスト国のナトミ村で購入したオリャンの花びらで作られた押し花の作品を取り出した。
「これは、シブの奥方に。長期保存が可能なため『永遠の花束』という記念品として購入されるらしい」
「あら!まぁ小さくて白い花びらがなんて可憐な花束なんでしょう!私にまで、わざわざありがとうございます」
少々旅の話に花を咲かせたあと。
「クロア、悪いが2人で話したいから外してくれ」
シブが自分の妻に香辛料を渡しながら頼むと、
「ええ、ごゆっくりなさってください。お酒は飲まれますか?」
という質問が返ってきた。
チラッと人形を見たシブは「いや、要らない」と答え、
クロアは、部屋から出ていった。
そして、人形は子猫の時と同じようにナナホシを紹介しつつ、これまでの旅について説明したのであった。
それに対するシブの第一声が冒頭の言葉である。
ちなみにナナホシはシブから要求がなかったため、机の上を自由に歩いている。フチを歩くのがお気に入りらしい。
「お前んとこの博士が、どうしてイレフストんとこの指紋を知っていたのか、生きてたらquestion、質問してみたかったな」
「そうだな。私はあまりにも自分自身のことを知らな過ぎた。とはいえ今更疑問を持ったところで…」
意味はない。本当にそうだろうか?
「そういえば、ナナホシと私は動力に互換性があったのだ」
「動力?ごかんせい?」
「人間で言えば同じ食事を食べていたということだ」
「ああ、なるほどな。じゃあ案外作った人間が同じだったのかもな」
「つまり、博士が?」
人形がハッとしたようにナナホシの方を見る。ナナホシは机からずり落ちそうになっていたので、そっと戻してやった。
「そりゃま、俺の知るところじゃねえがな。偶然にしちゃ出来すぎてるってことだ」
「ナナホシのいた施設は破壊措置を取ったが、資料はデータとしてナナホシと私の中にある。ただ、取り込み中に、ナナホシに関する記述は見つからなかったが」
「そうなんだな。何にしろ、イレフスト国には行かにゃならんのだろ?」
「ああ」
「冬がキツいだけなら、ウチに入れてやっても良かったんだがなぁ。まぁクロアが何と言うか分からんが」
「いや、夫婦だろう?気持ちだけで充分だ」
「まぁなんだ、戦乱やその前のことを調べるのがタブーってわけじゃない。仕事のついでに知り合いに聞いといてやる。たまには確認しに来い」
「ありがとう、シブ。そうさせてもらう」
「ナナホシもな、うまくやれよ」
「ウン、コノ机、歩クノ楽シイ。マタ来ル」
「ところで、今日もらった香辛料だがよ、次も買えるか?もちろん金は払う」
3/6/2025, 9:20:36 AM