Episode.11 言葉はいらない、ただ・・・
きっと初めから興味すら持たれていなかった。
都合のいい女だったんだ。
でも、最後は。最後くらいは。
「おまたせ芭ちゃん、どうしたの?」
手も声も緊張で震える。
「…あの、わ、私!颯斗先輩のことが好きなんです!
付き合ってくださいっ!!」
「え、と…ほんとに?」
「ほんとのほんとです!」
恥ずかしさでいっぱいになり、勢いのまま言葉を放つ。
「…俺でよければ、よろしくお願いします」
あの時は幸せだったなあ。
何もかも褒めてくれるし、優しくしてくれるし。
すごく好きだったはずなのに。
「芭、ごめん。別れよう。」
「…理由、聞いてもいい?」
「勉強に専念しようと思ってるんだ。
そうなったら、芭のための時間がなくなっちゃうから
申し訳なくて。自分勝手でごめん。」
「ほんとだよ、自分勝手…
私のこと好きだった?」
「うん」
嘘つき。ほんとは初めから無関心だったんでしょ。
あなたが嘘をついた時の、悲しそうな笑い方。
自分の欲求を満たすための女だったのも知ってるよ。
「そっか。今までありがとう、颯斗」
「ありがとう芭、またね」
お願い、好きじゃなくてもいい、それでもいいから。
最後くらい、また優しい笑顔見せてよ。
最後だけはいいでしょ?恋人だったんだよ?
私は、わたしはほんとにすきだったのに
好きって言わなくていいから、最後は笑いかけてよ。
8/29/2023, 2:14:03 PM