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「ささやかな約束」

 部屋を片付けていると、ふと、昔の約束を思い出した。幼い頃に交わした、ささやかな約束。
 それでもその約束は、私の中にしっかりと刻まれ生きる希望となっていたはずだった。けれど時が経ち、様々なものが変化していく中ですっかり記憶から消えかかってしまっていた。

 約束の相手からの連絡も、途絶えてしまってから久しい。きっとあちらも忘れてしまっているのだろう。
 忘れていたことが、忘れられてしまったことが寂しくて、切なくて胸が締め付けられるように痛んだ。

 守られなかった約束は、心に小さな傷を刻みつけて静かに消えていった。

11/14/2025, 10:16:55 PM