今日のテーマ
《朝日の温もり》
シャッという音と共にカーテンが開けられ、朝日の眩しさに思わず固く目を閉じた。
だけどその陽差しは思いのほか優しい温もりがあり、俺は寝返りを打って眩しさから逃れつつ、後頭部にその温かさを感じながら再び眠りの海に引き返す。
「朝だよ、起きて」
布団の上から遠慮がちに揺り起こす手は、俺を二度寝の誘惑から引き剥がしたいらしい。
心地良い微睡みからまだ抜け出したくなくて、布団を引き上げて体を丸くする。
「もうちょっと寝かせて」
「今日は一緒に出かけるって言ってたでしょ」
「うん……でも、もうちょっと……あと1時間、いや30分……」
「だめ。起きて。朝ごはん冷めちゃうよ」
あさごはん。
その言葉にパチリと目を開ける。
「昨日の夜、作ってって言ってたから、ちゃんと作ったのに」
「起きる! 起きます!」
がばりと布団を撥ね上げるようにして飛び起きた。
夢に見ていた「恋人が作ってくれる朝ごはん」の威力はどんな目覚ましよりも絶大だ。
しかも料理上手な彼女の手料理である。
鼻をひくひく動かすと、ほんのり味噌汁の香りがする。
朝から自宅で味噌汁を飲むなんて何年ぶりだろう。
いや、実家に帰省したら母親のお手製味噌汁を食べることもあるけど。
普段、平日はコンビニで買って会社で済ませるか、ゼリー飲料を流し込むか。
休日はトーストか、昼まで寝てて朝兼昼飯でカップ麺。
出かける日はコーヒーショップでモーニングを食べることもあるが、味噌汁とは縁遠い。
学生の頃には牛丼屋で朝定食を食べたりもしたが、最近はとんとご無沙汰だ。
「ごはんよそっておくから二度寝しちゃ駄目だよ」
現金な反応を見せる俺に笑いながら、彼女はキッチンに戻っていく。
その後ろ姿ににやけそうになる顔を何とか引き締めてベッドから抜け出す。
朝日の温もりを浴びながら味わう二度寝より、可愛い恋人の作ってくれる朝飯を味わうために、俺は手早くシャツを着込んで美味しそうな香りの漂うリビングへと向かうのだった。
6/9/2023, 12:58:00 PM