「沈む夕日」
生まれ育った街のはずれにあるこの丘で、何度見たことだろう。
家族と、友達と、そして君と。
美しく沈む夕日を。
「明日は晴れそうだなぁ」って父さんは言ってたっけ。
あいつは「またここで遊ぼう」って。
君は「目玉焼きの黄身みたいでおいしそう」なんて言って。
ここでたくさん笑って、たくさんいい思い出ができた。
なのに、なのに。
壊された。故郷が、思い出が、家族が、友達が、君が。
壊されたんだ。
なんでもこの辺り一帯には、兵器を開発するのに役立つ鉱物が大量に眠っているらしい。
だからここが戦場になるかもなんていう噂があった。
でも僕は、みんなはそんなはずないだろう。そう思っていつもと変わらない日常を過ごしていたんだ。
だからみんな逃げ遅れた。
突如としてどこかの国の軍隊がこの街に侵略して、街を焼き滅ぼした。
この街は、住民たちのために綺麗に整備されていた。
それが仇となりあっという間にこの街は火の海と化したんだ。
僕の家も、大好きな街並みも、時計台も。
全部ぜんぶ。
灰になった。
生きている住民は、たまたまこの丘に来ていた僕だけになってしまった。
僕はただ、焼けた街と沈む夕日を見つめることしかできなかった。己の無力さを呪うことしかできなかった。
僕は絶対、絶対に許さない。
沈む夕日の色は絶望の色。
そして決意の色。
僕は一番星に誓った。
この街を滅ぼした奴らに、必ず復讐すると。
4/8/2024, 3:59:31 AM