かたいなか

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逆に見える方の未来なんて、スマホの習慣天気予報くらいしか思いつかない物書きです。
今回のお題は見えない方、「見えない未来へ」とのことで、こんなおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
巨大で、強大で、資金潤沢な組織でありました。
その管理局の経理部の、一番偉い経理部長は、ビジネスネームをプロアイルルスといいまして、
プロアイルルス経理部長は、予算配分と余剰資金の運用方針と、ゲリラボーナス配布の決定権と、
ともかく、資産財産に関する全権を、その手に握っておったのでした。

ところでこのプロアイルルス経理部長、
だいたい4〜5年に一度か二度・三度の頻度で
資産運用利益の1%をドンと局内ひとつの部署に
ボーナス予算として付与する代わりに
ボーナスを求める部署と部署と部署を集めて
何かのゲーム、お題、競争等々で争わせる
という、珍妙極まりない趣味を持っておりまして。

「にゃごにゃご」
プロアイルルス経理部長——カギ尻尾のおでぶ巨大猫が、ヒゲを撫でながら言いました。
「にゃご、にゃごにゃご。にゃーご」

「プロアイルルス部長は、こう仰っています」
経理部長の通訳は、部長の身の回りのお世話をしている魔法生物。

「『今年は、ここ50年・100年で、最高の運用益が出た。よって運用益の5%を、ひとつの部署に特別予算として付けることとする』。
各々、予算を必要としている部署は、部長の出題するお題にかなう人選で申し込むように」

「運用益の5%」。
この通達に、各部各課各部門、沸き立つことを通り越して、ガチでシンと静まり返りました。
運用益1%のボーナスですら、その部署の財政が一気に変わるのです。それが5倍の5%です。

「にゃあごにゃごにゃご。にゃご」
「プロアイルルス部長は、
『予算が欲しければ、各部各課、各部門、3人1組で模擬戦のトーナメント戦を制するのだ』
と、仰っています」

「にゃごにゃーご。にゃごにゃご。にゃご」
「『各々、闘え、争え』と、仰っています」

さぁさぁ、ここからお題回収。
管理局には特殊部隊のような役割を持つ、法務部執行課の実動班、特殊即応部門というのがあって、
どうせ、模擬戦ならば、そこが模擬戦トーナメントを制して終わりだろうと、
思われては、いたのですが。

「今年の特別予算は!我々がいただく!」
管理局内にある難民シェルターの、大規模改修と増改築および区画整備とを実現するべく、
環境整備部の難民支援課と空間管理課が手を取り合って、イケボマッチョと電設のエキスパートと、奥多摩出身君を選出。

「収蔵部もぉ、ホンキ出すぅー」
環境整備部が各課を超えて同盟を組んだと思えば、収蔵部収蔵課は課の単体で、
財力にモノを言わせたお嬢さんが、別部署に勤務する武器・兵器コレクターから最恐最強最狂グッズのレプリカをレンタル。

私達も、俺達も、我々も。
各部署がホンキを出しまくり、もはやどこが優勝するか、見えない未来へとなってきました。

「勝つぞぉ!おー!」
「すべてはシェルター内の環境整備のために!」
「今年も予算はウチが頂きます」
「取り敢えずウチが貰っとくわ」

あっちの部署、こっちの課、そっちの部門。
それぞれがそれぞれで武装して、準備して、
結果として、優勝者の見えない未来へ向かって、
それぞれがそれぞれ、決戦の時を待つのでした……

11/21/2025, 9:58:34 AM