題 距離
もうちょっと離れて・・・
私が横の彼氏に言うと、彼氏は「ん?」ととぼけた顔でこっちを見る。
「どうして?」
「どうしてって近いから・・・」
「え?近くないよ」
「・・・近いから言ってるんだけど」
近くないと言い張る彼氏は、私の部屋のソファーのすぐ横に座ってて、私に抱きついてる。
「これが近くないなら何が近いのよ?」
「だって、くっつきたいんだもん、普通じゃない?」
犬系だ。
完全な犬系というか犬が目の前にいる。
「ほら、よーく見てください、ここにスマホがあります」
「ふむふむ」
「私は今このスマホでゲームをしています」
と言いながら、私はゲーム画面を彼氏に見せる。
「してるね〜あ、レベル15までいったの?えらいえらい」
なぜか頭をなでなでされる。
「そーなの!頑張って昨日やってたらハマっっちゃって・・・ってそーじゃなくてっ」
あやういあやうい。
危うく籠絡される所だった。
「私がゲームしててもさ、君がそーやって抱きついてたら動けないわけ。その結果、このゲームでもう3回もハート使っちゃってるの」
「そっか〜それは悲しかったね」
「誰のせいだと思ってるの?」
と言いながらまだニコニコして私に抱きついている彼氏を軽く睨む。
「あ、はいはい、言いたいことあるっ」
「はい、どうぞ」
彼氏が、急に手を挙げるから仕方なく指名する。
「デートの時にスマホ見てるのってどうかと思います〜!せっかく久々に会えるんだしさ〜」
「・・・うっ」
痛いところ突かれた。確かにね、それは彼氏の方が正しいかもしれない。
でも、昨日インストールしたこのネジ外してくゲーム楽しすぎて、やめられない止められない状態だ。
・・・それに、何もしてないとベタベタされまくってしまう。
それはそれで照れるしなぁ〜。
「もっと一緒にいようよ〜」
彼氏が、さらにぎゅうううっと私を抱きしめる。
「ま、まって窒息するから・・・」
私が頑張って振りほどこうとすると、彼氏は、拘束を弱めて私を見る。
「・・・僕のこと、嫌い?」
うるうるした目。
・・・・この小悪魔め。
「・・・いやっ、嫌い・・・とかじゃないけど・・・」
しどろもどろに返すと、わーいっとベッドに押し倒される。
やばい!!!このままじゃ抜け出せないっ。
「あっ、ねぇねぇ、もうすぐクリスマスじゃない!私、プレゼント欲しいなぁ、カナタくんにも買ってあげたいっ、一緒に選びに行かない?」
「えっ?!そーだねっクリスマスだ」
やった、絶対クリスマスとかイベントには飛びつくと思った。さすが犬系彼氏!
「じゃあ、行こうよ、ゆりちゃん何欲しい?イルミネーションとかも綺麗かな?」
ワクワクした目で私に問いかける彼氏。
うん、君はとってもカワイイよ・・・。
「イルミネーション、こないだ駅前ですっごく綺麗だった。プレゼントは欲しかったピアスがあるから、それでもいい?」
「もちろんっ、可愛い彼女のためならいくらでも買うよっ」
「いくらでもはだめでしょ・・・」
君のほうが可愛いと思いながら私は答える。
「行こうか?」
甘々犬系彼氏の問いかけに頷くと、私たちはどちらからともなく手を繋いで歩き出した。
12/2/2024, 4:02:03 AM