「君の目を見つめると」
彼女はサラサラとした黒髪ロングで、いつも冷静でおとなしい。
顔は特別かわいい訳ではないがそこが良い。
そんな可憐な姿に一目惚れしていた。
チラッ
「んっ」
すかさず目をそらす。
後ろの席何気なくあの子に目をやると目があってしまい息が詰まる。
体の中心から一気に熱がこみ上げ自分でも耳が赤くなっているのがわかる。
その後の授業はその時のことが忘れられずおかげでずっとフラッシュバックしていた。
多分、授業中は異様にニヤけていて先生からは懐疑の目で見られていたと思う。
こんなもやもやする関係を一年半くらいずっと続けている。
出会った当初から一目惚れだった。
ずっと一方的。
相手は自分なぞ眼中にないだろう。
同じクラスになれたときは千載一遇のチャンスだと思った。
三年生も同じクラスになれたらいいな〜じゃなくてこの2年生で勇気を振り絞るしかない。
でも、なかなか切り出せないし、今の状況のままでもいいと思っている自分がいる。
それだと何もなく卒業だ。
というもどかしい葛藤を今、帰るときだ。
まずは敵の情報収集からだ。
現在僕の意中の人の周りには二人いる。
いつもの二人だ。
一人はおしゃべりで少しぽっちゃりしている子。
もう一人は意中の人と同じくおとなしめ、そしてかなり細い子だ。
この二人はいつもいつも一緒。
何をするにしても一緒だから隙がない。
今もいつもの二人とぴったりくっついて下校している。
そういえば彼女の家を知らない。
少し犯罪的な気がするが今日はついて行ってみよう。
一年半片思いをしている人間が、好きな人の家すら知らないのはあってはならないことだ。
「おっ!」
細めの子が二人に別れの挨拶をし、彼女の自宅らしき家に入っていった。
「なるほど、あの子はここが自宅なのか…。ん?」
細めの子の自宅を横目で見ていると聞き捨てならない話が耳に入ってきた。
「アイツほんと陰気臭いよね」
ぽっちゃりした子が細めの子の悪口を言っていた。
好きな人は苦笑いをしながらただ頷いているだけだ。
「良かった〜。あの人は悪口に加担してない。これで悪口言ってたら裏切られた気持ちになるよ。にしても女の友情は怖いな」
好きな人は悪口に加担していなかったのでほっと胸を撫で下ろす。
その後もぽっちゃりした子は独りよがりに悪口をマシンガンのように喋っている。
「なるほど」
ぽっちゃりした子はマンションへと入っていった。
「とうとう一人か」
あの人がとうとう一人で歩いている。
あの人が一人でいるのはかなり珍しい光景だ。
もはや邪魔する人間はいない。
「やぁ」
なるべく声を低くならないよう努め、明るめに細心の注意を払って話しかける。
「え?どうしたんですか…。」
「良ければ僕の家に来てくれないかな?」
「えっと…でも…先生」
すると男はカバンから鋭く光るものを取り出そうとしている。
目線をそのまま顔に向けると人間とは思えなほど光を失った眼差しと目が合った。
4/7/2024, 4:57:33 AM