「今夜泊まらせて?」
突然やってきたそいつは、何とも清々しい笑顔でそう宣った。
「帰れ」
玄関の扉を半分ほど開いていた俺は、そのまま部屋に戻ろうとする。
「いや、ちょっと待って! なぁ、頼む、この通り! お前だけしか友達いないんだよぉ」
何とも虚しい事実を暴露しながら友人が食い下がってくるが、よくよく考えると俺自身にも友達と呼べるのはこいつくらいだったことを思い出す。
「・・・・・・お前なぁ、いくら友達だからってちょっとは配慮しろ」
「大丈夫、着替え諸々は持参してきた! 食費だってちゃんと払う用意はできてる!」
「そういうことじゃねぇ・・・・・・。まぁ、いいや。あまり散らかすなよ」
「サンキュー、心の友よ!」
そいつは意気揚々と上がり込む。ちょうど午前中に掃除をしたばっかだったのが幸いだった。
「あ」
そこで俺はあることを思い出す。
「おい、やっぱ、ちょっと待て・・・・・・」
「なあ、お前の洗濯物たたんでやろうか?」
「絶対に、触るなよ!」
俺は途中になってた、取り込んだばかりの洗濯物の存在を思い出す。
「あ、お前って、パンツはトランクス派なんだなぁ」
そう言ったそいつの手には、俺のパンツが躊躇いなく掲げられていた。
「おい、コラッ! ふざけんな!」
やっぱこいつはタチが悪い。女らしいとこはひとつもねぇのに、顔はまあまあ美少女なのがさらに憎らしかった。
「やっぱりお前、帰れ!」
俺はもう足掻いても仕方ないとは分かっていながらも、思いっきり叫んでやった。
【突然の君の訪問。】
8/29/2023, 8:26:57 AM