せつか

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疲れた顔が映っている。

昔から自分の顔が大嫌いだった。
父譲りの濃いめの体毛は小学生の頃はいじめの対象だった。彼らはいじめのつもりは無くて、愛のある弄りだったと言うのだろう。けれど私は彼らの言葉に愛を感じた事などただの一度も無かった。
中学、高校と歳が上がるにつれ、自分で少しずつ自分の顔を変えるようになった。
眉を剃って整え、顔も剃り、化粧水や乳液で肌を整えた。お菓子がやめられなくてニキビに悩まされたけど、それでも化粧やなんかで隠す術を覚えた。

整形はなんだか怖かったのとお金が無かったのとでしなかったけれど、お金持ちだったらやったかもしれない。

大人になって、人の目をスルーする術を身につけたり、没頭出来る趣味を見つけて、そこまで外見を気にする事は無くなったけれど、今も仕事で疲れた日なんかは、鏡を見るとうんざりする。

だけどたった一つだけ。
トレードマークとも言える顎にあるホクロ。
これだけは、取らなくて良かったと思う。
だって、多分これが無くなったら、私の顔じゃなくなってしまうだろう。

「·····はは。ま、いっか」
鏡に映る疲れた顔に、いびつな笑顔を向けた。


END


「鏡の中の自分」

11/3/2024, 3:34:22 PM