お題「星座」
間に合わなかつたため。
二次創作物
「はっ……」
悴んだ(かじかんだ)手を暖めるように息を吐くと壮五の目の前は白く染まった。只今の時刻は二十一時。この季節ともなると既に辺りは真っ暗だ。ふと何気なく空を見上げると無数の星が煌めいていた。
「……あれは……北斗七星……おおぐま座の、一部……」
環に教えてもらった星座の名前。冬間は特にはっきり見えるそう。空に指を伸ばしてまっすぐ線をつないでいく。
「……この真ん中から、五つ先の星は……」
「北極星」
後ろから声がひとつ重なった。その声に壮五がバッと振り返れば笑顔を浮かべる環が目に映る。
「そーちゃん、見っけ」
「環く……わっ…っ…!」
壮五が駆け寄るが先に壮五の頬がじんわりと熱が灯る。環が手袋をした手で頬を包み込んだのだ。
「そーちゃんの顔冷めて〜」
「たま、き、くん、どうして、こ、こに」
「ん〜?万ちゃんからここで仕事だって聞いて。そーちゃん、朝マフラーとか忘れてったろ」
そう言われて壮五は朝のことを思い出した。作曲にのめり込むあまり、ついコートだけで来てしまったのだ。
「正直とても寒かったから……助かり、ます」
そこで環は自分のかけているマフラーを外して壮五に巻き付けた。そうして手袋のした手で壮五の片方を掴み指を絡める。
「あったかい?」
「……うん、あったかい」
マフラーのおかげで首元が暖かい他に環が来たから更に身も心も暖かくなったというものも感じられた。繋いだ手からは環の温かな熱が壮五の手に移っていく感覚さえした。
「帰ったら先ずは風呂だな〜」
「……いやだ」
予想外の言葉に環は思わず声を上げる。
「はぁ?!あんたこんな冷え冷えで何言ってんの」
「環くんタイムが先」
「環くんタイムは風呂の後に営業しまーす」
そう言ってのけると隣の男は分かりやすく口を尖らせる。
【環くんタイム】――ある寒い日の夜。毛布にくるまった壮五がソファに座る環に背を預けたことが始まりの甘やかしタイム。環も環で壮五を抱きしめることで疲れを飛ばしていた。時々温かいコーヒーとカフェオレを添えて。しかしこの数分後、壮五は寝てしまうことが多かった。
ふと環は仕事が昼からだと思い出し壮五にある提案をする。
「じゃあ風呂は明日の朝にする?」
「する」
「ん」
そんな会話から数分後、【四葉環、逢坂壮五】と書かれた表札の家にたどり着いた。
「おまたせ。はい、そーちゃん」
「ありがとう」
小さな湯気を立たせた珈琲を受け取り口に運んだ。珈琲が冷えた身体の内側に染み渡っていく感覚に陥った。環も一口飲んで身体を温める。そうして環は自身の太ももをトントン叩いた。
「お、じゃま、します」
「ん」
環の太ももにちょこんと腰を下ろしたと同時に壮五の身体は環によって包み込まれる。
「んっ……あったかい……環くん……」
抱きしめられたその大きな腕をギュッと抱き締め返した。
「今日もお疲れ様な」
「環くん……も……ね」
次第にうつらうつらと瞼が微睡んでいく。
「寝ていーよ」
「いや、だ、たまきく、んと、まだ、おはなし……」
そこで言葉は途切れ聞こえるのは規則正しい寝息。
「……おやすみ」
環は頬に口付けを落とすと毛布こと壮五を連れてリビングを後にした。
10/7/2024, 3:32:55 AM