ノリノリ音楽と一緒に爆速で、主に都内の湾岸なんかを走行する、漫画原作が思い浮かぶお題です。
映画にもなったとか。
世代ながら未履修の物書きが、「ミッドナイト」をお題に物語をひとつご紹介。
最近最近のおはなしです。
都内某所、某不思議な稲荷神社の近くに、
お題どおりミッドナイト、深夜にしか姿を現さないおでん屋台が時折確率で出現しまして、
そこの店主は生粋の呑んべぇ、あらゆるお酒を愛し、様々なお酒に合うおでんを出しておりました。
「昔々やんちゃしてお偉いさんに、こっぴどく怒られた」とは店主の言葉。
それでもお酒が飲みたくて飲みたくて、今後一切悪いことをしないことを条件に、許してもらったのが【ピー】年前。
当時は若かったそうです。
そんな店主が深く暗いミッドナイトに、赤提灯の火を灯しますと、
ポツポツ、ぽつぽつ。
人外だの妖怪だの、別世界から東京に来た渡航者だのが、屋台の料理とお酒を楽しむのでした。
ところでその日のミッドナイトは
屋台にスペースを貸してる稲荷神社に住まう
本物の稲荷狐のおじいちゃんとおばあちゃんと
それからその2匹の孫の子狐が
それぞれお肉だのお酒だのを楽しんでおりまして。
「それでな、ワシとかかさんは、その怨霊になってしもうた幽霊をこう、バーンと、ばーんと」
デロンデロンおじいちゃん狐は、ちびちびピチャピチャ幸福に、文字通りコップのお酒を舐めます。
「その時のかかさんはなぁ、牙は鋭く、毛並みは美しく、狐火は熱く、秘術は強く、
でもその頃より更に、今はべっぴんなんじゃ……」
はいはい。はいはい。
おばあちゃん狐も店主もおじいちゃん狐のハナシは完全スルー。だってこれで2周目なのです。
おじいちゃん狐はおばあちゃん狐が大好き。
ずっとずっと、おばあちゃん狐の美しさ、賢さ、強さを自慢しておるのです。
「かかさん、かかさん、ああ、ワシのかかさん」
お酒と花の香りを口からヴァーして、
狐のおじいちゃんはおばあちゃんにグルーミング。
当然、おばあちゃん狐はキツイにおいが近づいてくるので、お耳が威嚇でイカさんしています。
くぅくく ギャッ! くくくぅくわぅ ギャギャ!
おじいちゃん狐とおばあちゃん狐が老夫婦漫才してる間、孫の子狐はちゃむちゃむちゃむ!
一心不乱に牛すじと、豚の角煮と、ソーセージと餅巾着と油揚げを、それぞれ食っておりました。
「おいしい。おいしい」
ちゃむちゃむちゃむちゃむ!
子狐のトレンドは油揚げ系と、なによりお肉。
おじいちゃん狐が好きなだけ食って良いと言いましたので、遠慮なく片っ端から食っておるのでした。
「ああ、かかさん、かかさん」
「はいはい」
「かかさんとワシの出会いは、昔々そのまた昔」
「はいはい」
「あれはまだ江戸も無かったころ……」
こやこや、コンコン。
ミッドナイト限定のおでん屋台から赤提灯の灯火が消えるまで、
おじいちゃん狐はずっとずっと、おばあちゃん狐の自慢話をリピートして、
こやこや、コンコン。
お酒の香りとおでんの香りで、ミッドナイトはゆるゆる、過ぎてゆきましたとさ。
1/27/2026, 6:41:18 AM