「まさか、お前が死ぬなんてな。」
彼の墓石に向かって言った言葉は、虚しく宙を舞った。
俺と彼は幼馴染で、幼稚園からずっと一緒だった。そのせいか、俺の横に彼が居るのが当たり前になっていた。
「ずっと親友だよ。」
そう笑顔で言う彼は、もう俺の記憶の中にしかいない。
「俺さ、お前が嫌いだよ。」
今更何を言っても、無意味なのに。それでも、何となく言いたくなった。
「天才なお前に付いていこうと、必死に頑張った。でも、お前はどんどん先に行ってさ。」
勉強・運動・人間関係、どれに置いても俺は彼には勝てなかった。それが腹立たしくって、うざったくて、大嫌いだった。それなのに、いつも俺に差し伸べてくれる手が温かくて、嫌いになれかった。どうせ俺は中途半端な野郎だよ。でも、それはお前もだろ。俺を惨めにするだけで、見捨てなかった。いっその事、見捨ててくれたら楽だったのかな。
「俺はまだ、お前に勝ってないのに。逃げやがって。」
涙が溢れた。悔しい、寂しい、色んな感情が頭で回った。
「ずっと親友なら、ずっと傍に居てくれよ。」
あれから一時間ほど、彼の墓石の前で泣き続けた。そのせいで、目が痛い。俺は持っていた、ライラックの花を乱暴に彼の前に置いた。
「いつか絶対、お前に勝ってやるからな。」
俺はそう吐き捨て、その場を去った。
俺達の間あるものは、友情か劣情か。今の俺には分からない。しかし、きっとこの得体のしれないものを、人は絆と呼ぶのだろう。
7/24/2024, 3:21:27 PM