薫雨

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気づけば0時。
眠りにつく前、湿った髪を乾かすついでにベランダで煙草をくゆらせながら眠らない街を一目見る。
ネオンライトに緋く鳴り響くサイレン、五月蝿いような物悲しいような誰かを救うための音。
眼下の白と赤の車体を見送った。

不健康生活真っ只中の自分が言うのは何となく申し訳ないが。
ご苦労様です、本当に。
大変さは少ししかわからないけど。
だって体験してないもので。

そうしているとさっきまでは不味くもなかった煙草が苦くなってきた。
知らない。
これが何の味かなんて。

ただ、捻れた願望と性癖の指し示す理想論にしたがっている。
でも死にたくはない、ただどうせこんなことで人は死へと走りはしない。

楽観的な思考にいつかの破滅を予感して、煙草を捻じ切り水に浸けてベットに貧相な女の肉体を投げた。

題目【眠りにつく前に】

11/2/2024, 11:58:52 AM