星に包まれて
思わず息を呑み込んだ君を見て、僕は嬉しくなった。
──ほらな、すごいだろ。
この絶景を知っているなんて、なかなかやるだろ、とばかりに得意気に胸をはる。君はもちろん僕のことなんて見ていない。見上げることに夢中だ。
──来て良かっただろ?
まあ、僕としては、君のその横顔を見れただけで十分だったんだけどね。ただ一心に何かに夢中になってる君を見るのが好きだ。
うん、泣き出したいくらいだ……君が上を向いたままそっと呟くのを聞いて、僕は言葉を失った。
すごいよ……お父さん、大声で叫んで走り出したいくらいだよ……!
そう言うと君は、本当にそのまま駆け出して行く。何というか、ずいぶんと感傷的だなあ、泣き出したいなんて……誰に似たんだよ。
僕が君ぐらいの頃、同じことを思ったのを思い出していた。そう、ここには昔、親父と来た。今は病院にいるあの人だ。信じられないだろうが、あの人にも若い父親だった時代があった。
僕もここに来て、嬉しいのか悲しいのかわからないのに、泣き出したい気持ちが込み上げた。でも妙に気恥ずかしくて、君みたいに素直に言葉にすることもできず、無言のまま立ち尽くしていたっけ。あの時、親父はどんな顔をしていたんだろう。あまり覚えていない。覚えているのは、思わず握った大きな手と、変わらない頭上のこの無数の輝き。だがそれでいいんだろうな、きっと。僕も君に覚えていて欲しいのは、この夜空の下、訳も分からず走り出したことだ。来年もまた来よう。君が喜びに満ちた気持ちで一年を締めくくり、新たな年を迎えますように。
12/31/2025, 7:44:34 AM