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雨の香り、涙の跡

最近よく雨が降る。そして私も最近よく泣く。
雨の日はいい。散歩している人も、外で遊ぶ子供達もいない。誰もいない薄暗い小さな公園で、雨に打たれながら涙を流す。酷い日は泣き崩れた時もあったけど、きっと誰も知らない。

雨が止み、私の涙が止む。
晴れる前に家へ帰る。雨の香りがなくなる前に。
あれほど泣いたのに涙の跡はない。
雨が涙も一緒に流してしまったから。

「遅かったね」と母が言う。
「ちょっと部活が長引いちゃった」
「今日暑かったでしょー、お疲れ」
「うん」
私は短い会話を交わして自分の部屋へ向かった。

優しくて大好きな家族、友達、部活仲間
きっと私の悩んでいる気持ちを話せば、寄り添ってくれる。
「そっか、辛かったね。大丈夫だよ。」って言ってくれる。
だけど、あの子は裏でこんな闇を抱えている。いつもこんな風に思っている。そんな印象だけは絶対に持って欲しくない。
変に気を使われ、私だけ丁寧に扱われる。
私はそれが大嫌いだった。
優しくしてくれる人達はそんな悪気はないのは分かっているし、私がそうさせてしまったのだから悪くない。
でも私は耐えられなかった。

それから、私はなんとしても自分の中にあるこの黒い闇を隠そうと思った。

6/19/2025, 11:04:50 PM