—魔法のティーカップ—
とある雑貨店で、一つのティーカップを買った。口縁は金で彩られ、胴には花の絵付けがされている。私は綺麗だなと思って手に取ったのだが……。
「今日はどんなお話をしてくれるの?」
このティーカップは、飲み物を注ぐと喋るのだ。最初はびっくりして、ティーカップを落としそうになった。が、今はもう慣れた。
「また私の恋愛話です。最近は一緒の話で、すみません」
名前もつけた。『tea』の『T』を取ってTさんと呼んでいる。
私がTさんを買って一ヶ月。最初は世間話ばかりだったが、私が恋の悩みを話すようになってからは、その話が多くなった。
「いいわよ、私も楽しいから。今日は何か進展はあった?」
「はい。今日はお昼休みがたまたま被ったので、彼を誘って一緒に昼食を食べました」
「あらすごいじゃない。どんなことを話したの?」
Tさんはティーカップなのによく恋愛を知っている。私はTさんのおかげで、同じ職場の彼と話せるようになった。本当に感謝している。
「好きな漫画の話になって、彼と好きな漫画が同じだったんです。今度、その漫画が映画化するので、それを一緒に見に行くことになりました」
「すごい!良かったじゃない」
「Tさんのおかげです。本当にありがとうございます」
「いや、頑張ったのはあなた。もっと自分を褒めなさい。今日も良いお話が聞けて良かったわ。冷めないうちに飲んで」
「はい」
淹れた紅茶はまだ少し温かかった。
私は丁寧に洗い、そっと棚に戻した。
これからも良い報告ができるように、また明日も頑張ろうと思った。
お題:ティーカップ
11/11/2025, 2:42:31 PM