語り部シルヴァ

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『またね!』

電車が発車するまであと10分。
これから僕の一人暮らし生活が始まる。
この電車がその第一歩だ。

楽しみと不安が混じりどこか落ち着かない。
車窓から見える見慣れた景色を見つめていると
少し寂しくなる。
うるさい感情たちを内心なだめていると、スマホが鳴る。

"やぁ、もう出発したかい?"
唐突に先輩からのメッセージだ。
思わず立ち上がりそうになるくらい心臓が跳ね上がる。

"いえ、あと数分で出発です。"
"そっかそっか。気をつけてね"

「ありがとうございます。と...」

返信をして既読が着いたのを確認して
再び車窓からの景色を見つめる。
すると車内に出発のアナウンスが鳴りドアが閉まる。

出発だ。
電車がゆっくりと走り出した瞬間。
外から僕の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
車窓を覗くと先輩が走っていた。

「先輩!?」
先輩は大きな声で叫んで何かを伝えようとした。

正直何を言っているかわかんなかった。
けど先輩の顔は笑顔で僕を見送ってくれた。

「...また会いましょう。先輩。」
きっと先輩がそう言ったことを信じてボソッと声が漏れる。

電車は勢いに乗ってスピードをあげる。
本当に、一人暮らし生活が始まった。

語り部シルヴァ

3/31/2025, 1:51:57 PM