光と闇の狭間で
この世界に産み落とされ気づくと私たちは、
一本の糸で吊るされ右へ左へ、
ぶらーん、ぶらーん、
と大きく揺れされていた。
右へ振れると、眩い太陽の光や、穏やかな音楽に包まれ、心地よく暖かい風が肌を撫でる。
左へ振れると、薄暗い闇に叫び声がこだまし、氷のように冷たい空気が身も心も凍えさせる。
ぶらーん、ぶらーん。
左へ戻される恐怖に泣き叫ぶ者、怒る者、しまいには失神してしまう者もいる。
右へ大きく振れたとき、
そこで糸が切れてくれないだろうか。
何度そう思っても糸が切れることはなく、
左へとまた、私たちを戻していく。
ぶらーん、ぶらーん。
私はこのどうしようもない状況を、
よく観察して二つのことに気づいた。
一つは、右に振れる時間と、左に振れる時間の割合はどうやら同じくらいということ。
もう一つは、左に振れている間は目を瞑り、耳を塞ぎ、
心の中で右の世界を思い出し、情景を広げ、そこで聴いた穏やかな音楽を口ずさめば、右の時間を作り出せるということだ。
それらに気づいてからは、私は左へ振れても、
いくらか気持ちが安定するようになった。
ぶらーん、ぶらーん。
私の隣に吊られている彼女は、今日も泣きながら揺れている。
ぶらーん、ぶらーん。
12/2/2022, 11:27:25 AM