子どもの頃、片時も手放せなかったタオルやいつも一緒にいたぬいぐるみ、といった類のものがあったという人は、意外と多いのではないだろうか。
私の場合は布団のシーツ。赤ん坊時代からの付き合いである。
物心ついた時は既に紐のように細長くなっており、子どもの頃はいつでもずっと握りしめていた。
名前は「チューチャン」。顔を埋めて息を吸い込むと、何とも言えない安心する匂いが心を満たすのだ。
紐のようになっていたとはいえ、元シーツのためそこそこ長さと大きさはある。
そのため、外泊する際は本体からちょっぴり分身を切り取って持って行ったりもした。
行く先々で私が失くしてくるものだから、少しずつ、少しずつ、チューチャンは短くなっていった。
出会いから干支3回りくらいは経った今、
すっかりシーツとしての面影は残っておらず、一見すればただの紐であり、布もずいぶん古くなったけれど、変わらず私のそばにある。
学校を卒業した時、一人暮らしを始めた時、就職が決まった時、捨ててしまう機会は幾度もあれど、なんとなくできなかった。
赤ん坊の頃から世話になってきたからだろうか。もはやお守りのようなものかもしれない。
そうして年甲斐もなく、1日の終わりにチューチャンを通して大きく息を吸い込む。
おやすみ、また明日。
8/17/2024, 8:10:19 PM