さっくん

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~この道の先に~

「あぶないっ!!!」

俺の声でビックリしたのか
猫が奥深く茂みの中へ
潜り込んでしまった。

最近動物が
危機感もなく道路へ
飛び出してるのを見てると
心からハラハラする。

けれど
何事の無かったかのように
毎回俺に甘えてくる。

野良猫のくせに。


けれど他の時間帯に
見てみると
俺だけにでは無い

子供から老人にまで甘えてる。
「特別じゃないんだな…」

しかし俺に気づいた猫は
やはり他人ではなく
俺にスリスリ甘てくるのだ。

仕事用のスボンが
毛で汚れてしまう

みんなに愛されているからこそ
保護なんて無理なのかもしれない。

そう思って
俺は仕事に行く道を
ゆっくり歩いた。


猫が鳴いている…
段々と大きく



ん?大きく?
俺は振り向くと
しっぽを左右に揺らしながら
着いてくるのではないか!


「何してんだっ…!
元に戻りな?危険だよ!」

早口で説明しても
相手は猫なのだ。

心配していると
猫が先頭を突っ走った。

仕事なんで
どうでもよかったのだ

俺は無我夢中に走り
猫の後を追った

やはり潜り込むのは
いつもの茂みの中

小さな子供が
ギリギリくらいだと思う。

けれど少し待ってみると
俺でも入れる大広場に
猫が出ていくのが分かった。

それを見失わないように
急ぎ足で走った

そろそろ息の限界だと
思ってる頃

猫が落ち着いたと
思ったら

着いた場所が
ある一軒家だった。

なんというんだろ
なんだか今風でもなく
昔風でもない
懐かしい香りがする
建物だった。

そこに猫が合図を送る
そしたら聞こえる
いつもより高めの鳴き声が

俺は猫を
2度見してしまった。

「お前…雌だったのか!」

と声を出すと
家の中から
女性が顔をのぞかせた。

「最近産まれたんですよ!」

俺は人見知りなせいか
会釈しか出来なかった


「って言う話は
後にしませんか?」

俺は恥ずかしくなり
クッションへ顔を埋めていると
俺の膝へ猫がたむろってきた。

「お前のおかげだよ
俺にこの道を案内してくれて
感謝しかないよ」

そしたら
初めて俺の顔を見て
高めの声で

泣(鳴)きわめくのだ。


7/3/2022, 1:53:49 PM