谷折ジュゴン

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創作 「それでいい」


「武器を置け。こっちに蹴るんだ。動くな。よし、そのままだ。良いな、そのままだぞ」

そう指示する敵の動きを、つぶさに観察する。
敵は俺を手早く縛り上げ、床に転がして余裕の笑みを浮かべた。

「ハッ、手こずらせやがって。なんとしても、宝の場所を吐かせるからな」

敵は銃をもてあそびつつ言う。敵が部屋を出た瞬間、俺は隠し持っていたナイフで縄を解き物陰に身を潜めた。

「ありゃ、アイツどこ行きやがった?」

俺は敵の背後から、急所をひと突きした。悲鳴すら漏らさず敵は倒れる。なんと張り合いの無い敵だろう。俺はナイフをしまい、部屋を出る。だが、それでいい。これは、ほんの肩慣らしだ。

(終)

4/4/2024, 11:12:16 AM